むかしむかし、あるところに人口7万人ほどの小さな国がありました。その国は昔から温泉観光地として賑わっていて、国民の多くは観光に来たお客さん相手にお菓子を売って生活をしていました。ところが、交通の発達により今までよりもいろいろな所へ短時間で行けるようになると、お客さんが分散するようになりました。年々お客さんの数は減っていき、かつて賑わいを見せていた商店街は影をひそめ、それと同時に国民の顔からも笑顔が消えていきました。
そんな毎日が続いたある日。お菓子を売る商人たちが「国王に会わせろ!」と、怒った顔でお城に乗り込んできました。それもそのはず。国民が毎日の生活に困り果てている時に、国王は毎日のように家来にお菓子を買ってこさせ、朝から晩まで食べ続けるばかり。国民たちはそんな国王を「可笑しぃ国王」とバカにしていました。
必死におさえようとする門番の静止を振り切って、商人たちは国王のいる王宮までやってきました。商人のひとりが今にも飛びかかりそうな勢いで、国王の下に駆け寄り言いました。
「国王様!私たち商人はお菓子が売れなくて困っています!どうか国王様の力で、お客さんが来るよう何か対策を!」
ところが国王は、必死にお願いする商人には目もくれず、お菓子を口にほおばると「そちも食べてみよ、うまいぞ」とお菓子を商人の前に差し出しました。
「…いいから食べてみよ」
その国王の態度にあきれた商人は、半ばやけになってお菓子を口にほおばりました。
「どうだ、うまいじゃろ?」商人は口にお菓子をほおばりながら、黙ってうなずきました。国王は商人たちにむかって言いました。「この国には、こんなに美味しいお菓子がたくさんある。これはわが国の宝だ。今日からこの国をお菓子の国…お菓子ぃ共和国と名付け、お菓子で街を元気にせよ。このお菓子たちを世に広めれば、きっとわが国はかつての賑わいを取り戻し、そなたたちの顔に笑顔も戻るであろう。ワッハッハー!」
それからというもの商人たちはお菓子を世に広めるため、「マジメに楽しく!遊び心をもって国を元気にする!」を合言葉に一丸となって頑張りました。
それから数年後、お菓子ぃ共和国はかつての賑わいを取り戻しました。
いつしか国民たちは国王を「お菓子ぃ国王」と呼ぶようになり、毎月6日を「お菓子ぃ日」とし、様々な催しを行いました。
また店頭で「ワッハッハー」と言ったお客さんにはサービスがあるようになったのも、遊び心を忘れない商人たちの心意気なんだとか。
おしまい。